このページの最終更新日:03/03/04
最初に
ここで述べること(特に技術的なこと)は、言葉だけでは大変表し難いところです。何とか述べてみますので、参考にしていただきたい。指導者の無知について
特に中学校の吹奏楽部においては、ほとんど指導されていないのではないだろうか。数年前全国大会で金賞を受賞した中学校の演奏をテレビで放映していたが、驚いたことに左手のフォームが全くできていない(指を独立して使っていない)状態でコントラバスを弾いていた。(人差し指から小指までの4本の指をひとまとめにして、それ全体を移動させて弾いていた)言ってみれば中学校吹奏楽部の頂点に立った学校がこの状態なのだから、地方大会ではこんな状態が当たり前なのだろう。吹奏楽指導者が、コントラバスの奏法について全く無知なのが現在の状況だ。怒りをさえ覚える。教則本について
教則本の存在さえ知らない中高校生のコントラバス弾きが、少なくない。「使っている教則本を見せて」というと、「ファーストディヴィジョン」なんぞを持ってくる。あれは初級のバンドのための合奏教本であって、コントラバス奏者の技術を高めるための教本ではない。指導者が教えられないのであれば、きちんとした教則本を与えなければならない。詳しくは「教則本について」のページ参照。音名について
もう十年以上前に会った高校生は、「1全音低く調弦し、楽譜を1音高く読み直す」というアクロバットのようなことをしていた。中学生の時にチューバを吹いていて、低音部記号は「移調読み」しかできないからだという。低音楽器は普通「inC」の楽譜で演奏するのだから、「C」を「ド」と読むような指使いで指導すればこんなことは起きない。「それでは合奏で不便だ」と言うなら、合奏で音名を言うときにはドイツ音名を実音で言う習慣にすればよい。そのくらいのことは、「吹奏楽指導者」と呼ばれるにはできなければなるまい。(フランスやイギリスの一部には、今もって移調譜が幅を利かしているものもある。しかしそれは極一部なのだから、そういう楽譜に当たったら、実音に書き換えればよいだけの話だ)聞こえなければ意味がない
「吹奏楽におけるコントラバス」には、「mp(メゾピアノ)以下の音量はない」。「pp(ピアニッシモ)」と書いてあったら、「mf(メゾフォルテ)かf(フォルテ)」で、「p」と書いてあったら「f(フォルテ)」で、「mp(メゾピアノ)」と書いてあったら「ff(フォルティッシモ)」で、それ以上は、どうでも好きなように演奏すればよい。(何しろそれ以上の音量の場合には、間違いなくチューバが同じ音を演奏している。いくら何でもテューバ以上にでかい音を出そうと考えるコントラバス奏者はいないだろう。たとえいたとしても、そりゃぁ無駄なこった)
特に「pizz(ピッチカート)」の場合は、絶対ホール中に聞こえるような音量で弾かなくてはならない。なにしろ、吹奏楽で「pizz」ができるのは、コントラバスしかないのだから。作・編曲者は「ここでピッチカートの音を響かせたい」と思うから「pizz」と書くのであって、聞こえなくてよければなにも書かない。指導者も、ここのところを十分認識すべきだ。聞こえないコントラバスについて
「うちのバンドのコントラバスは聞こえない」とお嘆きの指導者の皆さん、それは、弦の「押さえ方」に問題があるからです。その解決・訓練法は、「コントラバスの指導について」のページをご覧ください。2本のコントラバスについて
「コントラバスは、1本か3本。2本は避けるべきだ」と言われたことがある。2本だとリズムや音程のズレが互いの音をうち消すように働くが、3本になると強い方の2本が響くから音量が十分ホールに伝わるのだそうだ。残念ながら試したことはないので、これが本当であるかどうかはわからない。しかし、「やるな」と言われていることを敢えてやることもあるまいと考えている。ただし、人数の事情によって、そうばっかりも言ってはいられない。是非コントラバス用の椅子を
練習の時、管楽器奏者は常に座っているし、打楽器奏者は出番まで座っている。本番では必ず立っているはずの指揮者(そう、「指導者」といわれるあなたのことです)さえ座っている。なのに、コントラバス奏者だけが常に立ってなければならない理由があるのか。「コントラバス用の椅子」という物があることを指導者が知らないから、コントラバス奏者が苦行を強いられている。
7千円だか8千円だかの値段で売っている。コントラバス奏者はこれを使うことによって、苦行から、腰痛から、足のむくみから開放され、気持ちよく練習することができる。
また、椅子に座った状態では自然と楽器が少々寝て、腕の重さが十分弓に伝わるようになる。すると、音が鳴るようになる。すなわち、上達する。(もっとも、発音源が耳に近くなるために、実際以上に「鳴る」ような気がするということもある。それでもいいじゃぁないか。自分がうまくなったような気がして気持ちよく演奏できるなら、それだけだって「上達した」と言えるはずだ)よいことずくめだ。ぜひともコントラバス用椅子を購入すべきだ。(なお、私の経験からいくと、一番廉い物が使い勝手が一番よいようだ)この件に関しては、野田一郎氏のホームページ参照。エンドピンのゴムについて
エンドピンのゴムが無くなってすべっているコントラバスを見かけるが、あんなものは家具屋かホームセンターに行ってイス用の滑り止めゴムを買ってきて付ければすむ。1個50円から80円程度という廉いものだ。エンドピンの直径を測るかエンドピンそのものを持って買いに行けば、間違いなくぴったりの物を買うことができる。(なお、私の体験から言うと、灰色の物もあるが、黒い物の方が柔らかくて長持ちするようだ)
エンドピンの先がとがっている物であれば、同じようにホームセンターあたりで1辺20cmほどのゴムの板を買ってそれを床に置き、エンドピンをそれに突き刺すようにするとよい。これは少々値が張るが、それでもポケットマネーで十分買える。もちろん、きちんとした物もある。ただし、これが楽器のほんの一部とは思えない値段(具体的には失念)だけど。メトロノームを使った練習の方法について(1)
「ここは演奏不可能」と、頭から決め込んでいるヤツがいる。それは、自分の練習不足や怠惰の正当化にしか過ぎない。そういうヤツに限って、「できるだけ小さな部分に分けて」「自分のできる速さから」「何回も繰り返して」練習するという、「練習」の基本ができていない。
どんなに長くて難しいフレーズでも、つまるところ連続した二つの音のつながりでしかない。最初の音と次の音のたった二つの音だけを、メトロノームを60に合わせて弾いてみなさい。それをどんどん速くしていけば(このとき、たとえば16分音符が120になった時に8分音符は60の速さになるという原理がわかっていれば、練習はスムーズにできる。しかし、この易しい原理が理解できていないことが多い)、二つの音は弾けるようになる。次に二つ目の音と三つ目の音の二つだけを、同じように練習する。それができたら最初の音と二つ目の音と三つ目の三つの音をつなげて同じように練習する。これを繰り返していけば、大概のフレーズは演奏可能のはずだ。(もちろん、実際には「二つの音だけ」でなくてよろしい。「ひとまとまり」と考えられる音の数で十分)
一つのフレーズについて毎日100回、それを10日間練習してご覧なさい。1000回弾いたことになる。そこまでやってできなければ、それは指使いがまずいのだから、指使いを考え直すべきだ。それでもだめなら、1ヶ月練習してみなさい。そこまでやってだめなら、初めて泣き言を言うがよい。そこまで徹底して練習もしないで、「できない」とは何事か。メトロノームの使い方を知らないヤツが多すぎる。メトロノームを使った練習の方法について(2)
メトロノームの話が出たついで。メトロノームを使って合奏の曲を個人練習する場合、必ず全体練習の時より「2目盛速いテンポ」まで練習すること。経験豊かな奏者ならこれは誰にでも身に覚えのあることだが、アマチュアの指揮者というものは、速いテンポの曲は本番では必ず練習より速くなるという特性を持っている。これは心理的に当然のこと(もちろん、プロの指揮者はそれを完全にコントロールすのだろうが)なので、奏者の方で対応策を採っておかねばならない。そうでないと、「練習ではできたのに、本番では全然弾けなかった」という嘆きを何回も経験することになる。チューニングについて
現在では、かなり性能のよいチューニングメーターが、どこででも安く手に入る。そのため、チューニングをこれに完全に頼っている者が多いのではないだろうか。しかしそれでは、いつまで経っても「自分の音を自分で調整する」技術が身に付かない。本当の入門期は仕方ないにしろ、ある程度経ったら(音階を弾くようになったら)、D線だけはメーターで合わせ、そのほかの弦はフラジオレットで調弦するような習慣を身につけさせるべきだろう。
もちろん、調弦の間はそれに専念できる環境を保証してやらねばならない。コントラバスが調弦している時に無神経にフラット系の音を馬鹿でかい音で吹く金管楽器奏者がいるが、そんなことしたら全く調弦できないのは自明の理。最初から別室で調弦させるのが最良の方法だろう。
ただし、ほかの管楽器より2〜3Hz高く調弦させることをお忘れ無く。管楽器は演奏しているうちに自然に高めになってしまうものだが、弦楽器は自然に低くなることはあっても高くなることは考えられない。そこのズレをあらかじめ調整するための苦肉の策だ。(きちんとフラジオレットで調弦できるようになっても、なおかつチューニングメーターを使うという人もいる。私自身もそうだが、これは合奏練習での効率を考えるからで、これはここで問題にしていることとは別だ。ただし、「それも好ましくない」と言われれば、「その通り」と答える以外ないが)分奏について
分奏をする時、コントラバスは金管楽器と木管楽器のどちらに入っているだろうか。もちろん、弦楽器だからどちらでもない。しかし、チューバと同じ音を演奏することが多い関係上、金管楽器と一緒に分奏に参加しているのではないだろうか。それは、ある意味では合理的だし、効率的かもしれない。しかしそれでは、(特に中・高校生のバンドなどでは)コントラバスが何を弾いているか指揮者に聞こえないのではないだろうか。ましてや「金管+打楽器」という割り振りの場合、たった一人のコントラバスの音など、無きに等しい。
できる限り、木管楽器と一緒に分奏に参加するのが望ましいと考えている。そうすれば、(こういっては失礼だが)どんなに耳の悪い指揮者にもコントラバスの音が聞こえる。そこで、音程やリズムのズレを指摘してもらえる。こうしなければ、合奏の中では、コントラバス奏者の技術は伸びていかない。だから指揮者としても「木管とコントラバス」と指定するのはもちろん、奏者自身が「是非とも木管楽器と一緒にやらせてください」と指揮者にお願いしなければならない。そうしない奏者は、自分の技術の未熟さ、自信のなさなどのマイナス点をを隠そうとしているだけだ。甘えるな。誇りを持て
吹奏楽のコントラバス奏者諸君。自分が「吹奏楽における唯一の弦楽器奏者である」ことに誇りを持ちなさい。そしてその「誇り」に見合うだけの努力(「練習」と言い換えてもよい)をしなさい。そして、「虐げられし者」として連帯しようではないか。
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