#15◆ コエンザイムQ10


1)CoQ10の発見
CoQ10は、ウイスコンシン大学のクレーン教授らによって、1957年に牛の心筋のミ トコンドリアから結晶体の物質として抽出されました。その後、CoQ10はミトコンド リアの電子伝達系における電子伝達の担体として、ATPの産生にかかわっている重要な物質であることが解明されました。

2)心臓に対する薬理作用
フランスのカーンらは、イヌの薬理実験で、CoQ10が大幅な心拍量の増加を示すことを認めました(1961年)。また、テキサス大学のフォルカース教授らは、心臓病の患者では、心筋のCoQ10の含量が健常者に比べ低いという事実を明らかにしました。

3)医薬品として認められたCoQ10
CoQ10には、同族体(同じ仲間)があり、天然には、側鎖の長さによってCoQ6からCoQ11までが知られています。これらCoQ6からCoQ11を総称して、ユビキノンと呼んでいます。この中で、ヒトが持っているCoQはCoQ10のみです。ラット、マウスなどCoQ9であり、植物界はCoQ7が主体です。CoQ10は、1974年にノイキノン(CoQ10:ユビデカレン)の商品名でうっ血性心不全の治療薬として発売され現在に至っています。

4)サプリメント
CoQ10は、体内でエネルギーを生み出すもととなるATP(アデノシン三リン酸)を作るのに必須の補酵素(coenzyme)です。体内細胞で合成されますが、20歳以降減少傾向の一途で、心臓で合成される量は、80歳時には20歳時の42%まで激減します。一般に1日に必要とされる目安は30mgです。活性酸素の毒性から細胞を守る抗酸化作用があり、生活習慣病の予防や肌の老化防止に役立ちます。元来、医薬品として認可され、かつ体内で合成される物質であるため、安全性が高いと人気が出ました。

5)高コレステロール治療薬の副作用を減らす可能性
高コレステロール血症の治療薬の一つであるコレステロール合成阻害薬であるHMG-CoA還元酵素阻害薬の副作用として有名なものは、筋力低下等で発症する横紋筋融解症です。発症メカニズムは明確ではありませんがHMG-CoA還元酵素阻害薬がコレステロールのみならずCoQ10も減少させる可能性が示唆されています。心機能の低下している患者さんにHMG-CoA還元酵素阻害薬を使用する場合は、CoQ10の併用を考えたほうがよいのではないでしょうか?
 
1) 兼本成斌、滝本 修、吉岡顕一、ほか:HMG-CoA還元酵素阻害薬長期投与による
   coenzyme Q10濃度の変化と心機能。医学と薬学、41(6):1143-1149、1999
 
2) 平光伸也、森本紳一郎、植村晃久、ほか:Simvastatinとubidecarenoneの
   血清coenzymeQ10に及ぼす影響。循環器科、42:78−80、1997
 
3) 市川高義、成田ひとみ、奥田宣明、ほか:Pravastatin投与のよる血清
   CoQ10濃度の変化と心機能への影響について。動脈硬化、20(10):885−890、1992